原子力の時代 2013 7 28

書名 理工系のための原子力の疑問62
     なぜ世界は原子力発電に依存するのか
     再稼動をふまえ理解すべき科学的知識
著者 関本 博  ソフトバンク クリエイティブ

 原子力発電をめぐる議論は、現状では、
文科系の人たちの議論が主流で、
その結果、感情的な議論に終始する傾向が多いと思います。
 つまり、最初から、「嫌いなものは嫌い」、
「怖いものは怖い」という感情を基礎として、
議論を組み立てていくので、みんな結論は同じようなものとなります。
 本当は、みんなで、原子力や核技術について、
あるいは電力について、基礎的な知識を学んでから、
原子力発電の是非を考えていくべきでしょうが、
学校の先生によると、早くも中学生の頃から、
「理科は嫌い。科学は苦手だ」という傾向が出てくるそうです。
 そう言われて、改めて中学校の理科の教科書を見てみると、
意外にも難しいことをやっているのです。
 しかし、原子力についての基礎的知識となると、
高校の物理や化学の教科書ぐらいのレベルが必要となります。
 基礎的知識を得て物事を判断するか、
感情や感性で物事を判断するか、
これは、原子力だけでなく、政治や経済、国防などの分野も、同じでしょう。
 さて、前置きが長くなりましたが、
とりあえず、世の中の4分の1は理科系でしょうから、
理科系に特化した議論も必要かもしれません。
 ところで、私は、10年近く前に、このようなことを書きました。
原子力発電所というと、
みんな、学校の体育館のような巨大なものを連想しますが、
それは固定観念で、超小型の原子炉も可能ですと書きました。
 「それは、本当かよ」と思うでしょうが、
たとえば、原子力潜水艦は、「動く原子力発電所」です。
 私が考えているのは、もっと小型の原子炉です。
この本では、199ページから200ページに図解であります。
これらは、小型固有安全炉と呼ばれます。
 今までの原子力発電所は、巨大なものであり、
送電線で、東京のような大消費地に送電する方式でした。
 しかし、これからの時代は、
燃料交換はせず、原子炉ごと交換できるような発電所が主流となるでしょう。
 燃料交換は、危険で難しい技術を含んでいます。
このような操作を省ければ、小型で、
飛躍的に運転が容易な原子炉となるでしょう。

電力のABC 2012 10 28

A 電力は、大量に貯めておくことができない。

B 電力は、需要と供給を常に一致させる必要がある。

C 電力は、遠くへ送るほど失われる。

 まず、Aについては、ご存知の方が多いと思います。
スマートフォンやノートパソコンを持ち歩いていると、
「電力は、大量に貯めておくことができない」ということは、
よくわかっているでしょう。
 最近では、電気自動車がありますが、
「カタログどおりに走行距離が伸びなかった」という不満も出ているでしょう。
 さて、将来の技術というか、夢の技術があります。
それは、超伝導を使って、蓄電するという方法です。
超伝導状態になれば、電気抵抗がゼロですから、
いったん大電流を流すと、永久に電流は流れ続けます。
 そこで、発電された電力を電力貯蔵装置に貯蔵しておくという方法です。
超伝導コイルは、電気抵抗なしに大電流を流すことができますので、
さしあたって使い道のない電力をコイルに流しておき、
必要になったら、そこから戻して使うという方法です。
このような方法ならば、電力を「貯金」したことになります。
今のところ、夢の技術です。
 次は、Bでしょうか。
これは、知らない人が多いと思います。
「電力は、需要と供給を常に一致させる必要がある」
 電力の需要は、一日の中で、刻々と変化しますが、
電力の需要が増えたら、電力の供給を増やし、
電力の需要が減ったら、電力の供給を減らす必要があります。
 多くの人は、「ちょっと待ってほしい。
電力が足りなくなると困るのは、わかるが、
なぜ、電力が多すぎると問題があるのか。
作りすぎは、なぜ問題なのか」と思ったでしょう。
 これは、周波数の問題を考える必要があります。
科学雑誌「ニュートン 1月号」(2012年)から引用しましょう。
 電力が余ると、交流の周波数が狂ってしまうからです。
電力が余った状態では、
その大元である発電機の回転数を上昇させようとする作用が働き、
結果的として、周波数が上がってしまうのです。
逆に、電力不足となると、周波数は、下がります。
(周波数は、関東では50ヘルツ、関西では60ヘルツです)
 周波数が、本来の値から、ずれると、
周波数に基づいて決まるモーターの回転数が変動して、
工場での工業製品の製造に影響が出る場合があると言います。
 その許容範囲は、0.2から0.3ヘルツ程度までとされています。
また、周波数のずれが数%に達すると、
発電機が故障する可能性が出てくると言います。
 このため電力の需要と供給は、
ほぼ、ぴったりと一致していなければならないのです。
 電力会社では、周波数の変化を見て、
需要の変化を推測し、それに合わせて発電量を調整することで、
この問題をクリアしています。
(以上、引用)
 最後のCですが、これも知らない人が多いと思います。
「電力は、遠くへ送るほど失われる」
 これを簡単に説明すると、
電気は、電線の中を進むとき、熱となって失われていくのです。
冬にスマートフォンを手のひらに乗せると、暖かいと感じませんか。
昔は、パソコンのCPU(大規模集積回路)で、卵焼きができると言われました。
CPUが発する高熱で、卵が焼けるのです。
ただし、そのような状態では、CPUは故障してしまいます。
そういうわけで、CPUファンでCPUを空冷しているのです。
 話が長くなりましたが、
理想を言えば、電力は、「地産地消」が望ましいのです。
つまり、地元で取れた電力を地元で消費することが望ましいのです。
 そうなると、都市部は、困ってしまうのではないか。
そこで、ひとつの解決方法があるのです。
 私が子供の頃、
50万ボルトという、途方もない高電圧の送電線を造るという計画に、
地元では、反対運動が起きたことがありました。
 これほどの高電圧でも、
「健康被害はない。安全だ」と説明があったにもかかわらず、
反対運動がありました。
 電力を遠くまで送るには、「超高電圧」にするしかないのです。
高校の授業で習ったと思いますが、
電圧が高ければ高いほど、送電損失が少なくなります。
 最近は、50万ボルトどころか、
ちょっと怖い感じがしますが、100万ボルトによる送電も計画されています。
100万ボルトの送電線が出現するかもしれません。













































































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